就労継続支援A型とは?
年々増加している就労継続支援A型は、障害の特性などによって一般企業で働くことが難しい障害者にとって「働きたい」という願いを叶える大切な場所です。
今回は開業者が知っておきたい就労継続支援A型の基礎知識をご紹介します。
就労継続支援の開業を検討している方や興味をもっている方は、ぜひ参考にしてください。
就労継続支援A型とは?
就労系の障害福祉サービス事業は
・「就労移行支援」
・「就労継続支援A型(雇用型)」
・「就労継続支援B型(被雇用型)」
・「就労定着支援」
の4類型があります。
就労継続支援A型は、一般企業などに就労することが困難な65歳未満の障害者(利用者)に対して雇用契約を結び、生産活動の機会を提供、知識または能力の向上のための訓練などを行います。
雇用契約を結びますので、労働法などの適用や利用者に対して最低賃金を守ることが求められ、利用者が行う仕事を事業所で用意しなくてはなりません。
仕事は「自社の仕事を行ってもらう」または「別会社から承った仕事をする」ことになります。
A型の事業収入から経費を引いた額から利用者が就労した時間分を、給料として支払う必要があり、「A型事業の収益が上がらないから、運営団体の持ち出しで利用者へ給与を支払う」ことはできません。
事前に売上を客観的に示した「事業計画書」の提出が必要な行政もあります。
一般就労に必要な知識や能力が高まった利用者は、一般就労や就労移行支援を目指していきます。
就労継続支援A型のサービス内容とは?
自立した日常生活及び社会生活が送れるように、一般企業に雇用されることが難しい障がいのある方に対して以下のようなサービスを提供します。
・就労に必要な知識や能力の向上のための訓練
・雇用契約に基づく就労の機会を提供
・その他の必要な支援
就労継続支援A型は、B型よりもさらに踏み込んだ内容の仕事であることが多く、勤務時間も比較的長めとなっています。
そのため、雇用契約により各種保険が適用されているので、安心して利用し続けられますし、就労継続支援A型を利用しながら一般企業への就職を目指せます。
就労継続支援A型の対象者
就労継続支援A型は原則18歳以上65歳未満、身体障害、精神障害、発達障害、知的障害や難病があり、以下のような条件を満たすことによって、利用することができます。
・就労移行支援事業所を利用したが、就職が決まらなかった。
・特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、就職が決まらなかった。
・企業等で働いた経験はあるが、現在就労をしていない。
などの方が利用できます。
就労継続支援A型の賃金
就労継続支援A型事業所での給料は、比較的低くない傾向にあります。
雇用契約を結んだ上で働くので最低賃金額以上の給料が保障されているからです。
各都道府県の最低賃金をご参考ください。
就労継続支援A型の仕事内容
就労継続支援A型は利用者の賃金を原則A型の事業収入から充当しなくてはなりません。
国保連からの収入を利用者の賃金に充てることはできませんので、収益率の高い仕事内容を選ぶ必要があるのです。
【よくあるA型の仕事】
・原稿入力、アンケートの集計、各種データの作成などのパソコンを使った作業
・インターネットオークション作業代行
・書類整理や伝票管理などの事務作業
・在庫管理、発注作業、検品などの商品管理
・親会社が製造業をされていて、部品の組立て、検品、梱包作業など
・配達、宅配の補助業務
・カフェやレストランなどでの接客・販売業務
・パンやおかし、アクセサリー、雑貨などのものづくり
・リサイクル、清掃、農業 など
就労継続支援A型の利用料
就労継続支援施設A型は賃金が支払われるものの、障害福祉サービスの1つのため、施設の利用において利用料が発生します。
利用料は事業所や利用日数によって異なりますが、市区町村の補助金で9割を負担してくれるので、利用者は1割の負担で利用できる仕組みになっています。
残りの1割負担についても自己負担額は前年度の所得(世帯収入)に応じて4つのパターンに分けられており、1ヶ月の負担すべき上限月額が定められているので、上限を超える利用料が発生することはありません。
また、市町村民税が非課税の世帯の方や、生活保護を受給している世帯の方は自己負担がなく、前年度に働いていて収入と課税があった場合には、課税額に応じて月の上限が定められています。
就労継続支援A型の利用期間
就労移行支援は原則2年の期限が設けられていますが、就労継続支援の場合は利用期間・利用期限などは定められておりません。
利用する事業所と利用者との間で結ばれる雇用契約によって決められます。
就労継続支援B型との違い
【A型】
雇用の有無・・・雇用(労働法規の適用)
賃金・・・最低賃金保証
最低定員・・・10名
定款の目的・・・専ら社会福祉事業であること
【B型】
雇用の有無・・・非雇用
賃金・・・工賃(法令上は月額3000円以上)
最低定員・・・20名
定款の目的・・・制約なし
就労継続支援A型のメリット
・B型に比べると利用者を集めやすい。と言われています。
・就労継続支援A型の利用者は作業能力が比較的高いので、施設外就労でも売上アップに貢献してもらえます。
・既存の事業を行っている場合、利用者に仕事をしてもらうことで人件費のダウンサイジングができ、利用者も継続的な仕事を見込めるので離職率が低くなります。
・雇用助成金も利用でき、B型よりも事業の収益性が高いです。
・最低定員が10名なので、B型よりも面積の比較的小さい物件で始めることが可能です。
千葉 直子
2023 年 3 月 障がい福祉専門の「あいまり行政書士オフィス」 へ事務所名を変更
専門分野:障害福祉
高校・大学とボランティア部に所属
福祉系大学を卒業
【セミナー実績】
障害福祉行政書士のための法令と事例解説
行政書士向けコミュニティでのセミナー