【令和6年度から義務化】障害児通所支援事業所等の安全計画とは?策定方法と運用のポイント
児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害児通所支援事業所では、
令和6年4月1日から「安全計画」の策定が義務化されています。すでに安全計画を作成している事業所さんも多いと思います。
ただし、安全計画は、書類を一度作成してファイルに保管しておけばよい、というものではありません。
事業所内外の安全点検、こどもへの安全指導、職員への研修や訓練などについて、年間のスケジュールを定め、計画に沿って実施していく必要があります。
また、実施した内容を記録し、定期的に見直していくことも大切です。
この記事では、障害児通所支援事業所等における安全計画について、どのような内容を盛り込めばよいのか、作成後は何をすればよいのか、分かりやすく解説します。
障害児通所支援事業所等の安全計画とは?
安全計画とは、事業所を利用するこどもの安全を守るための取組を、計画的に実施していくための計画です。
対象となるのは、児童発達支援や放課後等デイサービスをはじめとする障害児通所支援事業所や、障害児入所施設などです。
令和4年の基準省令の改正により、令和5年4月1日から、安全計画を策定することが求められるようになりました。
令和5年度は1年間の経過措置が設けられており、努力義務という取扱いでしたが、令和6年4月1日からは義務化されています。
この制度が設けられた背景の一つには、令和4年9月に静岡県牧之原市の認定こども園で、送迎バスに取り残されたこどもが亡くなるという、大変痛ましい事故が発生したことがあります。
このような事故を防ぐためには、職員一人ひとりが気をつけるだけでは十分ではありません。
「誰が確認するのか」
「いつ確認するのか」
「何を確認するのか」
ということを、事業所全体のルールとして明確にしておく必要があります。
事故を起こさないための仕組みを作り、職員全員で同じ認識を持って取り組むことが、安全計画の大切な目的です。

安全計画を作った後に必要なこと
安全計画は、作成したら終わりではありません。
事業所には、主に次のような対応が求められます。
・安全計画を作成する
・安全計画に沿って、安全対策を実施する
・安全計画の内容を職員に周知する
・職員に対する研修や訓練を定期的に行う
・保護者に、事業所の安全に関する取組を説明する
・安全計画を定期的に見直し、必要に応じて変更する
つまり、運営指導などで確認されるのは、「安全計画という書類があるか」ということだけではありません。
実際に設備の点検を行っているか、研修や訓練を実施しているか、職員や保護者に内容を共有しているか、という運用面も大切になります。
また、安全計画の内容は、管理者や常勤職員だけが把握していればよいものではありません。
非常勤職員、補助職員、送迎を担当する職員など、支援に関わる職員全員に周知しておきましょう。
誰が勤務している日でも、同じ基準で安全確認ができる体制を整えておくことが大切です。
安全計画に盛り込む主な内容
安全計画には、事業所の状況に応じて、安全確保に必要な取組を盛り込みます。
ここでは、主な内容を確認していきましょう。
1.事業所や設備の安全点検
まず必要になるのが、事業所や設備の安全点検です。
例えば、次のような場所や設備を定期的に確認します。
・室内
・玄関
・階段
・窓や扉
・家具や棚
・遊具
・備品
・防火設備
・避難経路
棚や家具が倒れる危険がないか、こどもが指を挟みそうな場所がないか、避難経路に物が置かれていないかなど、こどもの目線で確認することが大切です。
また、事業所の建物内だけではなく、散歩コース、公園、外出先など、日常的に利用する場所も確認しておきましょう。
点検を行う際は、
・点検日
・点検をした職員
・確認した項目
・不具合や危険箇所
・改善した内容
などを記録できるチェック表を作成しておくと、実施状況が分かりやすくなります。
2.事故が起こりやすい場面のマニュアル
日々の支援の中には、特に事故が起こりやすい場面があります。
例えば、次のような場面です。
・食事
・午睡
・水遊び
・外出活動
・送迎
・車への乗車、降車
・道路の横断
・こどもの引渡し
このような場面ごとに、注意することや職員の役割分担を決めておきましょう。
また、災害、火災、不審者の侵入、行方不明、けが、誤飲、アレルギー、急な体調変化など、緊急対応が必要な場面についても、対応手順や連絡先を整理しておく必要があります。
特に、送迎を行っている事業所さんは注意が必要です。
乗車時と降車時の点呼、送迎終了後の車内確認、保護者への引渡し方法、欠席連絡があった場合の確認方法などを、安全計画や送迎マニュアルに反映させましょう。
「いつも確認しているから大丈夫」ではなく、確認の方法をルールとして決め、記録に残せる形にしておくことが重要です。
3.こどもへの安全指導
安全計画では、こどもに対する安全指導についても定めます。
例えば、
・交通安全
・避難の方法
・外出時の約束
・災害時の行動
・事故が起きたときの対応
などを伝えます。
ただし、こどもに一斉に説明すればよいということではありません。
年齢、発達段階、障害特性、理解の方法などに合わせて、それぞれのこどもが理解しやすい方法で行うことが大切です。
絵カードや写真を使用したり、職員が実際に動きを見せたり、繰り返し練習したりする方法も考えられます。
事業所を利用しているこどもたちに合った方法で、安全について伝えていきましょう。
4.保護者への説明と情報共有
安全計画や事業所の安全対策については、保護者にも説明しておく必要があります。
例えば、次のような機会を活用して共有します。
・契約時
・利用開始時
・保護者会
・おたより
・事業所内への掲示
・メールや連絡アプリ
また、緊急連絡先、災害時の引渡し方法、送迎時の受渡しルール、事故が発生した場合の連絡方法なども、保護者と確認しておきましょう。
事業所側では分かっているつもりでも、保護者に十分伝わっていないこともあります。
安全計画を作成したら、どのような方法で保護者に周知したのかについても、記録を残しておくとよいでしょう。
5.職員研修や訓練
職員に対する研修や訓練も、安全計画に盛り込む必要があります。
例えば、次のような内容が考えられます。
・地震発生時の対応
・火災発生時の対応
・風水害への対応
・不審者への対応
・119番通報の方法
・救命処置
・送迎中の事故への対応
・こどもが行方不明になった場合の対応
研修資料を配布しただけで終わらせるのではなく、実際に訓練を行い、職員がどのように動けばよいのか確認しておきましょう。
研修や訓練を行った場合は、
・実施日
・参加した職員
・実施した内容
・振り返り
・今後改善すること
などを記録します。
当日参加できなかった職員に対して、どのように内容を共有するのかも決めておくと安心です。
6.ヒヤリ・ハットや事故の再発防止
事故やヒヤリ・ハットが発生した場合は、職員個人のミスとして終わらせないことが大切です。
事故が発生した時間、場所、当時の職員配置、周囲の環境、対応手順などを確認し、なぜ起きたのかを事業所全体で検討します。
そして、再発防止策を考え、
・安全点検の方法
・マニュアル
・職員の役割分担
・研修内容
・安全計画
などに反映させましょう。
事故には至らなかったヒヤリ・ハットも、重大な事故を防ぐための大切な情報です。
報告した職員を責めるのではなく、事業所全体の改善につなげられる環境を作ることが重要です。

安全計画の年間スケジュール例 ※フォーマットあり
安全計画は、各年度が始まる前に、年間のスケジュールを定めておくことが基本です。
事業所の行事や季節ごとのリスクを確認しながら、「いつ、何を行うのか」を具体的に整理しましょう。
例えば、次のようなスケジュールが考えられます。
4月
・年間の安全計画を作成する
・設備や避難経路を点検する
・職員や保護者の緊急連絡先を確認する
・マニュアルを職員に周知する
5月
・交通安全について、こどもへの指導を行う
・送迎時の乗車、降車、引渡し手順を確認する
・送迎車両内の点検方法を確認する
6月
・水遊びやプール活動のマニュアルを確認する
・熱中症対策を職員に周知する
・救命処置に関する研修を行う
7月から8月
・熱中症対策を実施する
・外出活動時の安全確認を行う
・水分補給や体調確認の方法を見直す
9月
・地震を想定した避難訓練を行う
・災害時の保護者への引渡し手順を確認する
・防災用品や備蓄品を点検する
10月から11月
・不審者対応訓練を行う
・感染症流行期に向けた対応を確認する
・暖房器具を使用する前に設備を点検する
12月から1月
・降雪や路面凍結時の送迎判断を確認する
・暖房器具や電気設備を点検する
・年末年始の緊急連絡体制を確認する
2月から3月
・ヒヤリ・ハットや事故報告を集計する
・年間の取組を振り返る
・安全計画を評価する
・翌年度の安全計画を作成する
これはあくまで一例です。
地域の災害リスク、事業所の設備、利用しているこどもの特性、送迎や外出活動の有無によって、必要な取組は異なります。
国のひな形をそのまま使用するのではなく、自分たちの事業所で、どのような事故が起こる可能性があるのかを考えて作成しましょう。

※安全計画ひな形(川口市)
BCPや消防訓練があれば、安全計画は作らなくてもよい?
事業所さんから、
「BCPを作成しているので、安全計画は作らなくてもよいですか」
「消防計画や避難訓練の計画があるので、これで足りますか」
と聞かれることがあります。
安全計画は、BCP、消防計画、感染症対策、非常災害対策などと重なる部分もありますが、同じものではありません。
BCPは、自然災害や感染症が発生した場合でも、必要な福祉サービスをできる限り継続するための計画です。
一方で安全計画は、日常の支援、事業所の設備、外出活動、送迎なども含め、こどもの事故を防ぐための取組を年間で管理するものです。
すでに作成しているマニュアルや研修計画を、安全計画に関連付けて活用することはできます。
ただし、「ほかの計画があるので、安全計画は作らなくてよい」ということにはなりませんので、注意しましょう。
安全計画と実施記録をセットで管理しましょう
安全計画を作成した後は、実際に取り組んだことが分かるように、実施記録も残しておきましょう。
安全計画と一緒に、次のような書類を整理しておくとよいと思います。
・設備や遊具などの点検表
・研修や訓練の実施記録
・研修の参加者名簿
・訓練時の写真
・研修で使用した資料
・保護者への周知資料
・ヒヤリ・ハット報告書
・事故報告書
・マニュアルの改訂履歴
・改善事項と対応結果の記録
予定していた研修や訓練を実施できなかった場合は、そのままにしてはいけません。
実施時期を変更し、変更した理由や、その後どのように対応したのかを記録しておきましょう。
また、新しい活動を始めた場合、送迎車両が増えた場合、職員体制が変わった場合、事故やヒヤリ・ハットが発生した場合などは、年度の途中であっても安全計画やマニュアルを見直す必要があります。
計画と実際の運用にずれがないか、定期的に確認しましょう。
まとめ
令和6年4月1日から、障害児通所支援事業所等における安全計画の策定は義務となっています。
ただし、大切なのは、安全計画という書類を作ることだけではありません。
設備の安全点検、こどもへの安全指導、職員への研修や訓練、保護者への説明、ヒヤリ・ハットや事故の分析などを、年間を通じて実施していく必要があります。
そして、実施した内容を記録し、定期的に振り返り、必要に応じて見直していきましょう。
安全計画は、運営指導のためだけに作成する書類ではありません。
事業所を利用するこどもたちの命と安全を守るための、事業所全体の大切なルールです。
すでに安全計画を作成している事業所さんも、計画どおりに研修や点検を実施できているか、記録が残っているか、もう一度確認してみてください。
安全計画の作成や、事業所の状況に合わせた見直しについてお困りの場合は、あいまり行政書士法人までご相談ください。





