強度行動障害に関わる報酬基準の論点など

 令和5年10月23日、障害福祉サービス等報酬改定検討チームにより強度行動障害を有する児者への支援

 について検討された内容をわかりやすくご紹介いたします。

     

  第40回では、令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けて

  ・強度行動障害を有する児者への支援、

  ・共同生活援助

  ・自立生活援助

  ・地域移行支援

  ・地域定着支援

  ・地域生活支援拠点等

  ・自立訓練

  について検討議論されました。

  このページでは、

『強度行動障害を有する児者への支援』についての

 検討をまとめていきたいと思います。

強度行動障害とは?

強度行動障害とは、あまり普段生活をしていると聞きなれない言葉かもしれません。

私は福祉大学の出身ですが、私自身も強度行動障害を知ったのは、2年前に障害福祉専門の行政書士に

なってからでした。日本独特の概念のようですが、初めて認識されたのは1989年平成元年の、高度障害

児(者)研究会による報告書の中でした。

 

強度高度障害の定義からを見ていきましょう

【強度行動障害の定義】

精神科的な診断として定義される郡とは異なり、直接的他害 噛みつきや続きなどや、間接的な他害、

自傷行為などが通常では考えられない頻度と形式で現れ、その養育環境では、著しく処遇の困難なもの

であり、行動的に定義される群。

また、家庭にあって通常の育て方をし、かなりの療育努力があっても、著しい処遇困難な続いている状態。

 

 

【わかりやすく説明すると】

自分の体を叩いたり、食べられないものを口に入れたり、危険につながる飛び出しなど、本人の健康を損ね

る行動、他人を叩いたり物を壊す、大泣きが何時間も続くなど、周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、

著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態のことをいいます。

 

強度行動障害の支援の対象者とは?

障がい福祉サービスを受けるときにおこなう、障害支援区分の調査にあわせて把握する「行動関連項目」

(福祉型障害児入所施設の場合は強度行動障害判定基準表」)を用いて判定し、一定の点数以上となる人

(24点中10点)に対して手厚い支援が提供されます。

 

 

強度行動障害に対する加算の取り扱い

強度行動障害にいたる前からの支援や行動改善が見られた後における継続的な支援が提供できるようにするため、

重度障害者支援加算の対象者判定の基準点を引き下げた。

平成20年:行動援護

平成24年:共同生活援助、短期入所、施設入所支援の

平成30年度報酬改定において、生活介護についても「重度障害者支援加算」の対象とし、

障害児通所支援については「強度行動障害児支援加算」が創設されました。

さらに、令和3年度報酬改定において、グループホームで新たに区分4以上も「重度障害者支援加算」の対象とし、

障害者支援施設で実施する生活介護の外部通所者にも「重度障害者支援加算」を算定可能とする等の拡充が実施されました。

その結果支援対象者が拡大しています。

 

行動障害関連の障害福祉サービス・障害児支援の利用者さんの数

行動障害関連の障害福祉サービス・障害児支援の利用者利用者の数は、

 のべ 78,579人

(国保連データ令和4年10月時点)

 

・重度訪問介護

1,037人

・行動援護

13,082人

・短期入所

(重度障害者支援加算)

5,486人

・施設入所支援

(重度障害者支援加算Ⅱ)

22,895人

・障害児入所施設

(重度障害児支援加算)

福祉型130人:医療型0人

(強度行動障害児特別支援加算)

福祉型12人:医療型1人

・共同生活援助

(重度障害者支援加算Ⅰ※2)5,533人(介護型4,927+日中S型606)

(重度障害者支援加算Ⅱ) 4,072人(介護型3,668+日中S型404)

・放課後等デイサービス

(強度行動障害児支援加算)3,937人

・児童発達支援

(強度行動障害児支援加算) 440人

・生活介護

(重度障害者支援加算)21,954 人

 

論点に入る前に、強度行動障害の検討会についてのまとめです

まずは、強度行動障害を有するものの地域支援体制に関する検討会での報告書で現状の課題や

状況を把握しておきましょう。

 

 

 

現在の状況を大きくまとめると6つ

検討会での内容をまとめると、大きく6つにまとめられます。

 

1.支援人材のさらなる専門性の向上

・予防的な観点も含め、障害特性を正しく理解する支援をチームを基本として、また、人材育成も重要

・組織の中で適切な指導助言ができる現場支援で中心となる、中核的人材の育成が必要

・高度な専門性により、地域を支援する広域的支援人材の育成が必要

・人材のネットワークの構築も必要

 

2.支援ニーズの把握と、相談支援やサービスなどの調整機能

・市町村は、本人とその家族、支援ニーズを適切に把握して支援につないでいくこと、

支援につながっていない本人や、家族を把握してフォローしていくこと

・それぞれの機関が、役割や強みを生かしながら相談支援やサービスなどに関わる調整を行っていく

 

3.日常的な支援体制の整備と、支援や受け入れの拡充方策

・通所系サービス主に生活介護、短期入所、訪問サービスが、地域で安定的に提供されるよう体制の整備

・居住の場としてグループホームにおける受け入れ体制の整備

・障害者支援施設では地域移行に向けた取り組みを進めつつ、標準的な支援や建物設備環境を含めた支援の向上

・市町村は、地域生活支店拠点などの整備と、緊急時対応や地域移行などの充実に取り組むことが重要

・評価が適切に行われるよう認定調査員の強度行動障害に関する理解の促進を図り、行動関連項目の合計点が

高い人など、サービスの受け入れにつながるよう、より高い段階を設定して報酬面に反映していくことが必要

 

4.状態が悪化した人に対する集中的支援

・状態が悪化した場合、特性や行動の要因分析など適切なアセスメントを行い有効な支援方法を整理した上で

環境調整を集中的に実施し集中的支援の取り組みが必要

・集中的支援として

1️⃣広域的支援人材が、事業所などを訪問しコンサルを実施

2️⃣グループホームや、施設入所、短期入所を活用して一時的に環境を変えた上で適切なアセスメントや支援

方法を整理し、元の住まいや、新たな住まいに移行する

・各都道府県指定都市や広域で実施体制を整備していく

 

5.こども期から予防的支援、教育との連携

・幼児期からの子どもの強度行動障害のリスクを把握し家族を含めてライフステージを通して地域生活を支えていく

 

6.医療との連携体制の構築

・医療の充実と合わせて福祉や教育と連携した支援を進める

 

 

強度行動障害 令和6年度に向けて論点は大きく2つ

強度行動障害を有する児者への支援に係る、今後に向けて、論点は大きく2つあります。

 

論点1

強度行動障害を有する児者の受け入れ体制の強化について

 

論点2

状態が悪化した強度行動障害を有する児者への集中的支援について

 

が、検討されている内容です。

 

 

論点1   強度行動障害を有する児者の受け入れ体制の強化について

●行動関連項目の合計点が非常に高く 、 支援が困難な状態の児者が 、 サービスの受け入れにつながっ

ていない状況も踏まえ 、 強度行動障害を有する者については 、 10 点という区切りだけではなく 、

必要な支援が変わってくるような点数が非常に高い児者を受け入れ 、 適切な支援を行った場合に評価してはどうか 。

 

●その際 、 点数が非常に高い児者の受け入れは 、 事業所に高い支援力が求められることから 、 各事業所

において強度行動障害を有する児者に対してチームで支援を行う上で 、 適切な支援の実施をマネジメント

する中心的な役割を果たす人材  中核的人材  の配置を評価してはどうか

 

●強度行動障害を有する者の受け入れにあたっては 、 初期段階において環境の変化等に適応するために手厚

い支援を要することから 、 共同生活援助事業所における受け入れ体制を強化するため 、 初期のアセスメン

ト等を評価してはどうか

 

 

 

論点2 状態が悪化した強度行動障害を有する児者への集中的支援について

●高度な専門性により地域を支援する人材(広域的支援人材)が、事業所等を集中的に訪問等(情報通信

機器を用いた地域外からの指導助言も含む)し、適切なアセスメントと有効な支援方法の整理を共に行

い環境調整を進めていく、「集中的支援」について評価してはどうか

 

●広域的支援人材については、国において人材養成研修を実施する予定としているが、例えば、当面の間

は勤続年数が一定以上の発達障害者地域支援マネジャーや、中核的人材養成研修の講師等の研修受講者

以外の者について、広域的支援人材とすることを検討してはどうか

 

地域における強度行動障害を有する者の支援体制の強化

令和6 年度 概算要求額 4.6 億 円 (3.9 億 円) 内は前年度当初予算額

(実施主体:都道府県、 指定都市 補助率 :1/2)

 

事業の目的

乳幼児期から、成人期における各ライフステージに対応する一貫した支援の提供を目的として、関係機関など

によるネットワークの構築や、発達障害に関する住民の理解促進のためのセミナーなどの開催、発達障害特有

のアセスメントツールの導入をすすめるめの研修会などをおこなっている。

 

また、地域の中核である発達障害者支援センターの地域支援機能の強化を図るため、「発達障害者地域支援マ

ネジャー」の配置を行い、市町村・事業所・医療機関との連携や、困難ケースへの対応を行っている。

 

拡充の内容

著しい行動障害が生じているなどの対応が難しい事案について、現場で支援にあたる人材に対して 、

コンサルテーションなどによる、指導助言が可能な高い専門性を有する「 広域的支援人材 」 を発達

障害者支援センターに新たに配置 し 、 集中的な訪問などによる適切なアセスメントと有効な支援方

法の整理 を共に行い 、 環境調整を進めていく流れが想定されています。

 

 

おわりに

 

以上が令和5年10月23日現在検討されている内容、

現在の強度行動障害を有する児者を取り巻く支援策になります。

ではまた、まとめて整理してお伝えしたいと思います。

 

 

参考:第40回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料より

厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部
こども家庭庁 支援局 障害児支援課

 

この記事の監修者
あいまり行政書士オフィス 代表・行政書士
千葉 直子
2021 年 8 月 許認可専門の「とおる行政書士オフィス」 設立
2023 年 3 月 障がい福祉専門の「あいまり行政書士オフィス」 へ事務所名を変更
専門分野:障害福祉
高校・大学とボランティア部に所属
福祉系大学を卒業
【セミナー実績】
障害福祉行政書士のための法令と事例解説
行政書士向けコミュニティでのセミナー
 千葉直子アカウント