社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士などの資格を持っていれば、すぐに相談支援専門員として働けると思っていませんか?

実は、資格を持っているだけでは、相談支援専門員として配置することはできません。

相談支援専門員になるためには、原則として、次の両方を満たす必要があります。

1.定められた実務経験を満たしていること
2.相談支援従事者初任者研修を修了していること

また、相談支援専門員として働き始めた後も、継続して配置されるためには、定められた期間内に相談支援従事者現任研修などを修了する必要があります。

この記事では、相談支援専門員になるための実務経験、初任者研修、現任研修の要件や、採用時に確認したい注意点について解説します。

相談支援専門員とは?

相談支援専門員は、障害のある方や障害のあるこども、そのご家族から相談を受け、必要な障害福祉サービスや障害児通所支援の利用を支援する専門職です。

主な業務には、次のようなものがあります。

・本人や家族との面談
・生活状況や課題の把握
・サービス等利用計画案の作成
・障害児支援利用計画案の作成
・サービス担当者会議の開催
・福祉サービス事業所や関係機関との連絡調整
・サービス利用後のモニタリング
・計画の見直し

相談支援専門員は、本人がどのような生活を希望しているのかを確認し、その実現に必要な支援を一緒に考えます。

単に計画書を作成するだけの仕事ではありません。

本人や家族、行政、医療機関、学校、放課後等デイサービス、就労支援事業所、グループホームなどをつなぎ、本人を中心とした支援体制をつくる役割も担います。

そのため、障害福祉制度に関する知識だけでなく、本人の話を聞く力、課題を整理する力、関係機関と調整する力なども必要です。厚生労働省も、相談支援専門員について、生活全般に関わる相談、計画作成、関係機関との連絡調整などを担う職種として整理しています。

相談支援専門員は国家資格なの?

 

相談支援専門員は、社会福祉士や精神保健福祉士のように、国家試験に合格することで取得する単独の国家資格ではありません。

一定の実務経験を満たしたうえで、相談支援従事者初任者研修を修了することにより、相談支援専門員として配置できるようになります。

そのため、

「社会福祉士を持っているから、すぐに相談支援専門員になれる」

「初任者研修を受けたから、実務経験がなくても配置できる」

というわけではありません。

実務経験と研修修了の両方を確認する必要があります。国の資料でも、相談支援専門員として配置されるためには、3年から10年の実務経験と初任者研修の修了が必要と整理されています。

相談支援専門員になるための2つの要件

相談支援専門員として配置されるための要件は、大きく次の2つです。

要件1 定められた実務経験を満たすこと

必要な実務経験は、これまで勤務してきた施設や事業所、担当した業務、保有資格などによって異なります。

実務経験の区分は、主に3年、5年または10年です。

ただし、単純に、

「国家資格があるから3年」

「障害福祉事業所で働いていたから5年」

と判断できるものではありません。

勤務先の種類、職種、具体的な業務内容、資格に基づく業務への従事状況、勤務期間、実際の従事日数を確認する必要があります。

要件2 相談支援従事者初任者研修を修了すること

実務経験要件を満たしたうえで、都道府県知事または指定研修事業者が実施する相談支援従事者初任者研修を修了する必要があります。

国の標準カリキュラムでは、初任者研修は合計42.5時間とされ、講義、演習、実習によって構成されています。

必要な実務経験は3年・5年・10年

相談支援専門員の実務経験要件は、国の告示によって細かく区分されています。

分かりやすく整理すると、主に次のようになります。

相談支援専門員の要件となる実務経験

国家資格があれば3年でよい?

ここは特に誤解されやすいため、注意が必要です。

「社会福祉士や介護福祉士などの国家資格があれば、実務経験は3年だけでよい」と説明されることがあります。

しかし、正確には、国家資格を持っているだけでは足りません。

国家資格を使うルートでは、原則として次の両方が必要です。

・告示で定められた相談支援業務、直接支援業務、就労・教育分野の相談業務などが通算3年以上あること
・対象となる国家資格に基づく業務が通算5年以上あること

対象となる国家資格には、例えば次のようなものがあります。

・医師
・歯科医師
・薬剤師
・保健師
・助産師
・看護師、准看護師
・理学療法士
・作業療法士
・社会福祉士
・介護福祉士
・言語聴覚士
・精神保健福祉士
・公認心理師
・栄養士、管理栄養士
・その他、告示で定められた資格

国の告示では、対象業務が通算3年以上あり、さらに、これらの資格に基づく業務が通算5年以上あることが要件とされています。

ただし、これは必ずしも「3年+5年で合計8年間必要」という意味ではありません。

例えば、社会福祉士として行っていた相談支援業務が、告示上の相談支援業務にも該当する場合には、同じ勤務期間が、対象業務の期間と国家資格に基づく業務の期間の両方に該当する可能性があります。

そのため、国家資格に基づく業務を5年間行い、そのうち3年以上が対象となる相談支援業務や直接支援業務に該当していれば、5年間の中で両方の要件を満たす可能性があります。

一方で、国家資格の登録証を持っているだけで、資格に基づく業務を行っていない場合は、このルートの要件を満たしません。

また、国家資格に基づく業務が5年以上あっても、そのうち相談支援専門員の実務経験として認められる業務が3年以上なければ、要件を満たさない可能性があります。

資格名だけで判断せず、資格取得日、勤務先、職種、具体的な業務内容、従事期間を確認することが大切です。

相談支援業務で5年以上の経験がある場合

一定の施設や事業所で相談支援業務に通算5年以上従事している場合は、実務経験要件を満たす可能性があります。

相談支援業務とは、障害のある方などの日常生活の自立に関する相談に応じ、助言、指導、支援計画の作成、関係機関との連絡調整などを行う業務です。

対象となる可能性がある勤務先には、例えば次のようなものがあります。

・一般相談支援事業所
・特定相談支援事業所
・障害児相談支援事業所
・居宅介護支援事業所
・介護予防支援事業所
・児童相談所
・身体障害者更生相談所
・知的障害者更生相談所
・福祉事務所
・障害者支援施設
・障害児入所施設
・老人福祉施設
・医療機関

就労分野では、障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターでの相談支援業務も対象になる場合があります。

教育分野では、特別支援学校などにおける就学相談、教育相談、進路相談などが対象として定められています。

ただし、これらの勤務先に在籍していただけで、すべての期間が相談支援業務として認められるわけではありません。

実際に相談、助言、計画作成、関係機関との連絡調整などを担当していたかを確認する必要があります。

直接支援業務で5年以上の経験がある場合

一定の資格等を持つ方が、対象となる施設や事業所で介護等の直接支援業務に通算5年以上従事している場合も、実務経験要件を満たす可能性があります。

ここでいう一定の資格等には、例えば次のものがあります。

・社会福祉主事任用資格
・介護職員初任者研修修了者
・訪問介護員2級以上に相当する研修の修了者
・保育士
・児童指導員任用資格
・精神障害者社会復帰指導員任用資格

直接支援業務とは、障害のある方、高齢者、こどもなどに対して、入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、本人や介護者に対して介護に関する指導を行う業務です。

対象となる可能性がある職種には、生活支援員、児童指導員、保育士、介護職員などがあります。

ただし、職種名だけで判断することはできません。

どの施設や事業所で、どのような利用者に対して、実際にどのような業務を行っていたのかまで確認します。

資格等を持たずに直接支援業務を行っていた場合

社会福祉主事任用資格、保育士、児童指導員任用資格、介護職員初任者研修などを持たずに、対象となる直接支援業務を行っていた場合は、原則として10年以上の実務経験が必要です。

同じ障害福祉事業所で同じ職種として働いていても、対象となる資格等を持っているかどうかによって、必要年数が5年になる場合と10年になる場合があります。

また、勤務期間の途中で資格を取得した場合には、資格取得前と資格取得後で実務経験の区分が変わる可能性があります。

採用時には、保有資格だけでなく、資格を取得した年月日も確認しましょう。

実務経験は年数だけでは判断できません

相談支援専門員の実務経験を確認するときは、単に「福祉事業所に何年間在籍していたか」だけで判断することはできません。

大切なのは、国の告示で定められた相談支援業務や直接支援業務などに、実際にどのくらい従事していたかという点です。

例えば、福祉事業所に5年間在籍していても、その期間に次のような事情がある場合は、すべての期間が実務経験として認められるとは限りません。

・請求、経理、総務などの事務業務だけを担当していた
・休職や長期欠勤などにより、対象業務へ従事していない期間があった
・管理業務だけを担当し、相談支援や直接支援を行っていなかった
・複数の業務を兼務しており、対象業務への従事状況を確認できない

また、国家資格を使った実務経験ルートでは、資格取得日と、その資格に基づく業務へ従事した期間も確認します。

ただし、資格を取得する前の勤務期間が、必ずすべて実務経験から除かれるわけではありません。資格取得前の期間であっても、別の相談支援業務や直接支援業務の区分に該当する可能性があります。

どの実務経験ルートで確認するのかによって扱いが異なるため、資格名や勤務年数だけで判断しないことが大切です。

国の資料では、「3年以上の実務経験」について、次の両方を満たす必要があるとされています。

・対象業務への従事期間が通算3年以上あること
・対象業務へ実際に従事した日数が540日以上あること

つまり、カレンダー上で3年が経過しているだけでは足りず、対象となる業務へ実際に従事した日数も確認されます。

5年または10年の実務経験区分についても、在籍期間だけで判断せず、勤務先、職種、具体的な業務内容、資格取得時期、対象業務への従事状況を実務経験証明書で確認しましょう。

実務経験証明書の様式や必要な記載事項は指定権者によって異なる場合があるため、採用や指定申請を進める前に、確認することをおすすめします。

「福祉事業所で5年働いた」だけでは判断できません

例えば、放課後等デイサービスに5年間在籍していた場合でも、その方が担当していた業務が、

・こどもへの直接支援だったのか
・請求や総務などの事務業務だったのか
・管理者としての管理業務だけだったのか
・児童指導員や保育士として勤務していたのか

によって、実務経験としての扱いが変わります。

単に事業所名と勤務年数だけを見て、「5年あるから大丈夫」と判断するのは危険です。

対象となる勤務先、職種、具体的な業務内容、保有資格、資格取得時期、従事期間、従事日数を一つずつ確認する必要があります。

相談支援従事者初任者研修とは?

実務経験要件を満たした方は、都道府県などが実施する相談支援従事者初任者研修を受講します。

国の標準カリキュラムでは、初任者研修は42.5時間で、講義、演習、実習により構成されています。

ただし、研修の開催時期、申込方法、定員、推薦方法、受講対象者は都道府県によって異なります。

地域によっては、現に相談支援事業所で配置を予定している方や、法人から推薦を受けた方が優先されることもあります。

申し込めば必ず受講できるとは限りません。

相談支援事業所の開業を予定している場合は、指定希望日から逆算して、研修の申込時期と修了予定日を確認しておきましょう。

現任研修は5年度ごとに修了が必要です

初任者研修を修了した後も、それだけで永久に相談支援専門員として配置できるわけではありません。

厳密には、相談支援専門員という国家資格の更新手続ではなく、相談支援専門員としての配置要件を維持するための研修です。

初任者研修や前回の現任研修などを修了した年度の翌年度を初年度として、5年度ごとの各年度末までに、相談支援従事者現任研修または主任相談支援専門員研修を修了する必要があります。

国の標準カリキュラムでは、現任研修は24時間です。

主任相談支援専門員研修を修了した場合は、現任研修を修了したものとして扱われます。

令和6年度に新設された「相談支援員」とは?

令和6年度から、障害福祉分野の新しい職種として「相談支援員」が設けられました。

相談支援員は、相談支援専門員としての実務経験や研修要件を満たす前から、一定の要件を満たす相談支援事業所で、実際の相談支援業務を経験できる職種です。

相談支援員として勤務する方には、次の要件があります。

・社会福祉士または精神保健福祉士の資格を持っていること
・原則として常勤専従で勤務すること

ただし、業務や育成に支障がないと市町村が認める範囲では、兼務が認められる場合があります。

どの事業所でも相談支援員を配置できるわけではありません

社会福祉士または精神保健福祉士を採用すれば、どの相談支援事業所でも相談支援員として配置できるわけではありません。

国のパンフレットでは、相談支援員を配置できる事業所について、次の両方を満たすことが示されています。

1.機能強化型の基本報酬を算定している指定特定相談支援事業所であること
2.主任相談支援専門員を配置し、指導・助言を受けられる体制を確保していること

相談支援員は、相談支援専門員の指導のもとで、サービス等利用計画の原案作成やモニタリングなどを経験できます。

ただし、相談支援員は相談支援専門員の代わりになる職種ではありません。

相談支援員だけを配置して、特定相談支援事業所や障害児相談支援事業所の人員基準を満たすことはできません。

新規開業時にも、所定の実務経験と研修要件を満たした相談支援専門員の配置が必要です。

なお、障害福祉分野の「相談支援員」は、生活困窮者自立支援制度で生活困窮者への相談を行う「相談支援員」とは別の職種です。

採用前に確認しておきたいポイント

相談支援専門員を採用するときは、履歴書だけで判断せず、少なくとも次の点を確認しましょう。

・過去の勤務先と事業の種類
・勤務当時の職種
・具体的な業務内容
・保有資格と資格取得年月日
・国家資格に基づく業務を行った期間
・対象業務への従事期間と従事日数
・実務経験証明書を取得できるか
・初任者研修修了証があるか
・現任研修の期限を過ぎていないか
・初回の現任研修に必要な実務経験があるか

※指定権者によって、実務経験証明書の様式や添付資料、業務内容の確認方法が異なる場合があります。

まとめ

相談支援専門員として配置されるためには、原則として次の両方を満たす必要があります。

・3年、5年または10年の実務経験要件を満たすこと
・相談支援従事者初任者研修を修了すること

必要な実務経験は、勤務年数だけでは判断できません。

勤務先、職種、具体的な業務内容、保有資格、資格取得時期、国家資格に基づく業務への従事期間、実際の従事日数を確認し、過去の勤務先から実務経験証明書を取得する必要があります。

特に注意したいのが、国家資格を使う実務経験ルートです。

あいまり行政書士法人では、相談支援専門員の実務経験要件の確認、実務経験証明書の確認、特定相談支援・障害児相談支援事業所の指定申請をサポートしています。

採用予定者が要件を満たしているか不安な場合は、雇用契約や開業日の確定前にご相談ください。

※本記事は、2026年8月時点で確認できる国の告示、厚生労働省資料および実務経験資料をもとに作成しています。実際の配置可否や研修の受講要件については、管轄する指定権者および研修実施機関の最新案内をご確認ください。

この記事の監修者

                   千葉 直子

 あいまり行政書士法人 代表・行政書士。

 障がい福祉分野に特化し、障害福祉事業所の開設支援、顧問対応、運営指導・監査対応、法改正対応などを中心にサポートしています。制度理解にとどまらず、現場実務と法令遵を見据えた実装支援を強みとしています。

  2021年8月 とおる行政書士オフィス設立

  2023年3月 あいまり行政書士オフィスへ事務所名変更

  2024年7月 あいまり行政書士法人として法人化

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その他、セミナー・執筆活動を行っています。

「法令と実務事例解説セミナー」

 障害福祉制度・運営実務セミナー

「就労継続支援B型開業実践講座」・「児発・放デイ開業実践講座」

この記事の監修者

                   千葉 直子

 あいまり行政書士法人 代表・行政書士。

 障がい福祉分野に特化し、障害福祉事業所の開設支援、顧問対応、運営指導・監査対応、法改正対応などを中心にサポートしています。制度理解にとどまらず、現場実務と法令遵を見据えた実装支援を強みとしています。

  2021年8月 とおる行政書士オフィス設立

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